従来の作品作りにとらわれない”歴史に忠実な表現”への挑戦
2025年1月5日 (現地時間) に発表されたゴールデングローブ賞®のテレビドラマ部門において、作品賞をはじめ今年最多の主要4部門を獲得したFXプロダクション制作の『SHOGUN 将軍』。ディズニーの多彩な制作スタジオの中でも、特にプレミアムドラマのジャンルで斬新な作品を次々と生み出すFXコンテンツ&FXプロダクションズのチェアマン、ジョン・ランドグラフが『SHOGUN 将軍』を成功に導いた、従来のハリウッドの枠にとらわれない野心的な姿勢について語りました。

FXコンテンツ&FXプロダクションズのチェアマン ジョン・ランドグラフ
セリフの約7割が日本語、『SHOGUN 将軍』の成功を後押しした
字幕視聴の急速な浸透と視聴者の本物志向
世界中で“SHOGUNブーム“を巻き起こしている本作は、米国で制作された作品でありながら、日本を舞台に、主演の真田広之をはじめ日本人俳優が日本語で演じます。一見、当たり前のようですが、非英語のセリフが吹き替えではなく英語字幕 (または視聴地域の言語の字幕) で表示されることは、ドラマシリーズにおいては従来の常識を超えた大きな挑戦でした。
「私には20代の息子が3人おり、彼らは日本の漫画が好きで、日本のアニメは吹き替えではなく字幕で見ています。日本の声優が話すオリジナルの言葉で見たいという思いがあり、若い彼らは字幕への抵抗がありません。時代の変化もあり、本作も半分以上を日本語で表現していますが、文化を正しく伝えるにはその土地の言語を使うべきだと考えているんです」とランドグラフは語ります。
映像化に適切な原作と才能を見い出す審美眼
『SHOGUN 将軍』に、FX史上最高とも言われる巨額の制作費を投入するという大きな決断を下したことについては、まず原作の素晴らしさを挙げました。
「私はこの原作が大好きです。物語もキャラクターも本当に素晴らしいので、壮大な物語にしたいという思いがありました。同時に、この素晴らしい物語を正しく伝えなくてはいけないと思ったのと、視聴者にもキャラクターと共にこの世界を体験していただくような感覚を持っていただきたかった。ですからキャスティングや衣装、建築物や風景なども、正確なものにしたいと思ったのです。成功するためには完全なる献身が必要であり、予算も投入する必要がありました。でもその甲斐はあるはずだ、と思ったんです」と語りました。

©Courtesy of FX Networks
日本の漫画やアニメなども今後ハリウッドで実写化したいかについて「私自身も息子たちを通じて、日本の漫画の良さ、素晴らしさを認識しています。どれもよく書かれていて、キャラクターたちも本当に素晴らしい。ただ映像化において難しいところは、既に (漫画原作自体が) 最高のバージョンとして完成している、という点です。内容、書かれ方、物語も全て完璧で最高な状態で出来上がっているので、映像化された際に同様かそれ以上のレベルに達するには非常にハードルが高いと言えます。それくらい、IPとして日本の物語やキャラクターたちにはとても良いものが存在していると感じます」と話し、『SHOGUN 将軍』のように優れた原作を細部に至るまで完璧に映像化するためには、丁寧かつ慎重に原作や企画を選りすぐる必要性を強調しました。さらに「今後、FXとして海外で撮影した海外の物語を題材にした作品にも挑戦したい」と話し、言語や国境を超えた作品制作にも意欲を見せました。
また彼は自分の強みを「才能を見出す能力」だと言います。「浅野忠信さんがゴールデングローブ賞で助演男優賞を受賞しましたが、本読みの時点で日本語がわからない私にも浅野さんの卓抜した能力が伝わりました。 (自分と同じ言語を話さなくても) 素晴らしい俳優の才能は視聴者にも伝わるものだと思います。これまでに『アトランタ』や、『フィラデルフィアは今日も晴れ』という作品でも同じような経験をしています。」と英語圏以外からも圧倒的な才能を見極める審美眼こそが、FXでのものづくりの最先端であることを物語ります。

©Courtesy of FX Networks
徹底したのは、「本物」へのこだわりと「卓越したもの」を作ること
“究極の日本美”の再現に成功した裏にある日本文化を熟知した職人の存在
『SHOGUN 将軍』の舞台は戦国時代の日本ですが、主に北米・カナダで撮影されています。「実際に日本へは、企画開発中に3回訪れています。日本での撮影の可能性を探ったのですが、巨大なセットが建てられ、多くのスタッフ、キャストを収容でき、海や自然が近くにあるという条件を満たす場所を探すことができませんでした。私はできるだけ、現地でロケーション撮影することが望ましいと思っていますが、今回は北米に日本の職人や俳優に来てもらいました。撮影期間は合計210日、1話あたり平均21日かけているので、それだけの期間撮影が可能な条件をそろえる必要がありますが、第2シーズンでは、日本を含めグローバルに可能性を探りたいです。」と制作体制についても柔軟な発想を求めた。

©Courtesy of FX Networks
日本人から見ても違和感のない衣装や建造物、調度品などを再現することへのこだわりは、並々ならぬものがありました。制作者の信念として「卓越したものを作ること」と答えたランドグラフは「今回、日本文化の卓越した美しさが世界的に評価されました。細部までこだわってくれた日本の職人の方々が作品に参加してくれたおかげです」と日本の匠の技を絶賛。
「今作のために14万平方フィート (約13万平米) という巨大なセットを立てました。部分的ではあるものの大阪城の外観を再現するなど、本物を追求するため、北米のクルーだけでなく、日本文化を熟知した職人の方々を日本から招き、細部まで美しさを追求しました。そのため食事も和食と洋食の2パターンを提供するなど、制作費用は確かにかかりましたが」と、これまでになく徹底した「本物」志向への追及を強調しました。
『SHOGUN 将軍』が示した新たなハリウッドの基準、
そして未来のクリエイターへメッセージ
ランドグラフの指揮のもと、全てに対して手間もコストも時間も惜しまず、卓越したものを目指したことで、『SHOGUN 将軍』は、世界が瞠目する傑作となったのでしょう。そして今後はハリウッドの新しきスタンダードであり古典となっていくに違いありません。
最後に、新たな潮流を生み出した『SHOGUN 将軍』のクリエイターとして、世界を目指す若き才能へ、真摯なメッセージを伝えてくれました。
「作りやすい物語を目指さないこと。より複雑な繊細なニュアンスのあるもの、壮大な物語、個性のあるものを目指してほしいですね。そのためにしっかりと時間をとってください。私たちはみな素晴らしい物語を必要としているのです。それが人間なのです」
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