ユニークでイマジネーションあふれる[もしもの世界]を舞台に数々の感動的な物語を観客に贈り届けてきたディズニー&ピクサーの最新作は、 “エレメントの世界”を描いた『マイ・エレメント』。 火・水・土・風のエレメント (元素) が共に暮らす都市エレメント・シティを舞台に、だれも知らないイマジネーションあふれる色鮮やかな世界での奇跡の出会い、予想もできない驚きと感動の物語です。大ヒット公開中の『マイ・エレメント』にも携わった、ピクサー・アニメーション・スタジオのアニメーターの原島朋幸さんに、自身が携わった作品やアニメーターという仕事について、また『マイ・エレメント』の制作の舞台裏について語っていただきました。
キャリアとピクサー・アニメーション・スタジオでの学び
2015年からアニメーション・スタジオ、ピクサーに勤務し、『アーロと少年』や『リメンバー・ミー』など、時代を超えて愛される物語とキャラクターを生み出しているピクサー作品に数多く関わってきました。
「アメリカでの活動は約16年。そのうち、ピクサーは今年で9年目になります。最初にアニメーターになりたいと思うようになったきっかけは、『ジュラシック・パーク』 (1993年) と『トイ・ストーリー』 (1995年)。そこでCGに興味を持ち、実際何か映像を作る側になりたいと思いました。その後、CGの祭典SIGGRAPH1999のエレクトリックシアターという部分で自分の作品が流されて入賞した時に、実際にアメリカで働けるんじゃないかという手応えを掴み、サンフランシスコにあるアカデミー・オブ・アートで学びました。そこでは通称ピクサークラスと呼ばれるアニメーションのクラス、実際にピクサーなどで活躍されているアーティストさんから教えてもらうことができるのですが、そこで基礎を叩き込まれました。その後、他のアニメーション・スタジオなどを経て、今に至っています」
ワールドクラスの作品を持つピクサー・アニメーション・スタジオについては、「クリエイティブとテクニカルの両方が、常に相乗効果を発揮し、良いバランスが取れている。また、その両面で素晴らしい人材が揃っています」と原島さん。「本当に働きやすい環境を提供してくれる会社です。例えば子供のイベントがあるのに行かなかったりすると、「何で行かないの?」というような雰囲気がある。仕事と生活のバランスを重視し、そこに理解があります。社内教育にも力を入れていて、「ピクサーユニバーシティ)にはアートやCGだけでなく、ファイナンシャルほか、さまざまなクラスがあります。私はドローイングや実際に粘土を使ってモデルを作るモデリングのクラスに参加しています。また、毎年夏にはインターンシップがあって、パンデミックの最中でもZOOMを使ってやっていました。」
『マイ・エレメント』の制作の舞台裏
次に、アニメーターとしての仕事の具体的な内容を、実際に原島さんが『マイ・エレメント』で手がけた、アツくなりやすくて家族思いな火の女の子のキャラクター「エンバー」がデリバリーに行くシーンの映像の完成形と、監督のフィードバックにより変化していく様子を映像を用いながら解説していただきました。
「実際に私が携わったのはエンバーになります。最初にストーリーボード(クリエイターのアイディアを可視化したもの)があり、そこから3Dのレイアウトに置き換えた段階で、映像化した場合の整合性が合わなかったり、時間的な制約もあってアイディアが変わっていくということも結構あるんですね。実際のオリジナルのストーリーボードと最終形とは少し異なることが多いです。」
と、まずは最初に作られたキャラクターのアイディアが映像化されるまでは、様々な過程を経て変更や修正が重ねされることを説明。
(エンバーがデリバリーにいくシーンの映像を見ながら)「僕が監督と実際にどんな話をしたのかをお話ししたいと思います。最終的に描かれているアイテムは3つありますが、レイアウトの段階では1つしかありませんでした。監督とすり合わせをして、監督の意向を踏まえつつ自分のアイディアも取り入れた結果、3つのアイテムが地面にあるという形になりました。アイテムを2つ追加するとなったわけですが、じゃあそれをどこに追加するか、それを考えるのはアニメーターの仕事です。
監督の希望を実現するために、アニメーターがコントロールできないこともあります。その場合、エフェクトの担当者と話をして、ラフなシミュレーションをやってもらうこともあるのですが、実際に採用されるかどうかわからない割に結構な手間がかかるんですね。でも、このブロッキングという段階はアニメーターが監督にアイディアを売り込むチャンスでもある重要なポイントなので、エフェクト担当者には何とかお願いしてシミュレーションをやってもらうことは多いです。
もちろん、アイディアが却下されることもよくあって、そうした監督のフィードバックを受けながら、どうやって進めていくかというのも重要な仕事です。以前、こんな例もありました。実際にやりとりをして、監督自身もアイディアを出したのですが、実際にやってみたところ『自分が想像していたのとは違った、前のアイディアの方が良かった』と言って、素直に僕のアイディアを認めてくれました。そういう感じで、最終的に監督からOKが出るまで、やりとりが何度も行われます。
また、『マイ・エレメント』では、“エレメント性 (それぞれの元素が持つ特性)”をもうちょっと押し出していくこともありました。火は早く動くと消えるじゃないですか。消えて、火は上に上がっていき、水は下に落ちる。火の場合、映画を注意して見ていただくと、上に消えていくシーンが結構あります。そんな風にして、最終的に火の感じが出るように仕上げていきました」
ワールドクラスの制作チームがアイデアを出しあい、完成させた感動の物語『マイ・エレメント』は大ヒット公開中です。
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コラム
ピクサー・アニメーション・スタジオ
日本人アニメーター 原島朋幸さんインタビュー
2023年9月7日
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