20世紀スタジオとライトストーム・エンターテインメントによる新たなる映画のジャーニー、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を制作するにあたり、アカデミー賞受賞監督ジェームズ・キャメロンと彼が率いるチームは、水中で演者のパフォーマンスを捉えるため、新しいフィルムメイキング・テクノロジーを開発した・・・それは映画の歴史上これまで一度も行なわれたことのないものだった。「カギとなるのは、水中や水面で実際に撮影することです。そうすれば演者はちゃんと泳ぎ、ちゃんと水面に上がり、ちゃんとと飛び込むことができます」とキャメロンは言う、「あの映像がリアルに見えるのは、モーション自体がリアルだったからです。そしてまた感情もリアルだったからです」。
撮影スタッフはまず、キャメロンとプロデューサーであるジョン・ランドーの製作会社があるカリフォルニアのマンハッタン・ビーチ・スタジオに巨大タンクを作った。この巨大サイズのタンクを使うことで、キャメロンはリアルな海の状態を再現することができたのだった。長さ120フィート(約36.5m)、幅60フィート(約18.3m)、深さ30フィート(約9m)のこのタンクには、25万ガロン以上の水を入れることが可能。「あれは私たちにとって、まるでスイス・アーミーナイフのように万能なシステムとなりました」とキャメロンは言う、「海岸に打ち寄せる波を描くことも、波に揉まれながら海から出ようとする人々を描くこともできます。海面に出てきて波に打たれて必死に呼吸しながらセリフを言おうとするところなど、人や生物と波の相互作用を描くこともできます」。<ザ・レーストラック>という愛称がつけられたプロペラ・システムには、直径6フィート(約1.8m)の船舶用のプロペラが2枚付けられており、これを使ってタンクの中に水流を作り出している。「(タンク内の)実際の水流は10ノット程度でした」と彼は説明する、「しかし映画上ではそれよりもずっと急激に見えるようにすることができました」。

水中でのパフォーマンス・キャプチャー・テクノロジー撮影を成り立たせるためには、水がクリアで透明でなければならない・・・その事実はスキューバダイビング用のギアを装着して撮影するのは不可能だということを意味する。「気泡が多量に出てしまうと困るのです」と監督は説明する、「気泡の一つ一つは揺らめく小さな鏡のようなものです。(パフォーマンス・キャプチャー)システムは、演者の身体につけられたマーカーのドットをすべてしっかり読み取ることで演者のモーションを捉えようとしますが、そのときマーカーのドットと気泡との区別がつかなくなってしまうのです」。つまりキャメロンと撮影クルーに残された選択肢はひとつしかなかった。「あのタンクの中で作業をする全員が、息を止めていました」とこの監督は言う、「たとえば誰かがタンクの底で照明を支えていなければならないとすれば、そのスタッフは息を止めてそれをやっていたわけです。カメラを回すスタッフも息と止めていました。そしてもちろん、演者たちも息を止めていなければなりませんでした」。
ランドーは次のように説明している、「私たちは疑似的な描き方に頼るつもりはありませんでした。俗に言う「ドライ・フォー・ウェット(水を使わずに水中らしく見せる撮影技術)」をするつもりはなかったのです。ゾーイ・サルダナにも、サム・ワーシントンにも、シガーニー・ウィーバーにも、その他の演者たちにも、実際に水の中に入ってもらい、潮の流れや水の動きや波を感じながら、その場で演じてもらうのです。私たち以前にパフォーマンス・キャプチャー撮影を水中で行なった人は誰一人としていません」。

水中でのパフォーマンスに更なる説得力をもたせるため、出演者たちは世界的に有名なエキスパートのカーク・クラックのもとでフリーダイビングを学んだ。「役者たちはそれをとても楽しんでいたようです」とキャメロンは言う。実際にその通りで、ワーシントンは次のように語っている、「ジム(ジェームズ・キャメロン)は、誰もやったことのない独創的な方法でストーリーを語るために、テクノロジーや方法論の限界を常に押し広げているんだ。彼と共にその最前線に身を置いて、肉体と感情の両面で自分の力が試されたり挑まれたりすることを僕は楽しんでいるよ」。
タンクが作られ、出演者と撮影クルーがフリーダイビングのトレーニングを済ませたことで、キャメロンが自身の壮大なビジョンに命を吹き込む準備は整った。「基本的に、水中のボリューム(パフォーマンス・キャプチャー用スタジオ空間の呼称)と、それとは別に大気中のボリュームの両方で撮影する形に行き着きました」とキャメロンは続ける、「このふたつのボリュームは、(画面上は)わずか1インチの間を置いて重なり合っていなければなりません。コンピュータがひとつのボリュームからデータを得ると同時にもうひとつのボリュームからもデータを得て、そのすべての情報が統合された映像がリアルタイムで私のバーチャル・カメラに映し出され、キャラクターが出入りしたり、泳いだり、ドックに上がったり、飛び込んだり、潜水して泳いだりする様子を見ることができる。つまり、ふたつのまったく異なるキャプチャリング方式がひとつに融合されているわけです。当然、それをしっかり行なうためのソフトウェアを作るにはかなりの時間を要しましたが、結果的に驚異的なものが得られました」。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』のパフォーマンス・キャプチャー撮影は2017年9月に始まり、キャメロンと出演者たちは、およそ18カ月間かけて、4本の続編映画すべてのシーンに取り組んだ。編集室では、キャメロンと編集チームがシーンの各場面からベストなパフォーマンスを選出した後、キャメロンが革新的な<バーチャル・カメラ>を使用して特定のショットを創作していった。このバーチャル・カメラを使うことで、監督は現実のロケ地やハリウッドのスタジオで撮影しているのとまったく同じ感覚でCGの世界の中でシーンを撮影することができる。バーチャル・カメラを通して彼が目にするのは、サルダナやワーシントンやウィーバーの姿ではなく、パンドラの世界にいるあの大きなブルーの生き物たちの姿なのだ。「彼ら全員を、そうあるべきの姿で見ることができました。陸上でも海中でもね。しかも、ダイバー・アドレス・システムを介して、演者たちと話すこともできました」と彼は言う、「彼らは、バーチャル・カメラを通して見えるものをベースに私が告げる演出に従ってリアルタイムで演技をしていたわけです」とキャメロンは言う。

バーチャル・カメラによるショットが場面として編集されると、次にそのショットとパフォーマンスはニュージーランドにある視覚効果会社Wētā FXの視覚効果のエキスパートたちのもとに送られた。シニア視覚効果スーパーバイザーのジョー・レッテリの指揮のもと、またライトストーム社のリチャード・ベネハムとも協力しながら、Wētā FXのエキスパートたちは各演者によるパフォーマンスのニュアンスが失われないよう注意しながら作業を進めた。「私たちはひとりひとりの演者、ひとつひとつのパフォーマンスを、一コマ一コマのレベルでしっかりと着目しながら、必ずそれにマッチするよう映像に仕上げています」とレッテリは説明する、「突き詰めれば、重要なのはキャラクターであり、キャラクターを肌で感じられることであり、キャラクターと共にその場を共有することであり、そのパフォーマンスをしっかりと見られることであり、彼らが感じていることや経験していることを理解することに行き着きますからね。そういった感情との繋がりを私は常に目指しています」。その結果として仕上がったものについて、ランドーは次のように語っている、「Wētā FXは、パフォーマンスをものすごく高度に再現したフォトリアル(写実的)なクオリティのショットを実現させました。かつて前作を作ったとき、私は、パンドラにおいて何が「リアル」なのかは誰にもわからないことなのだから、フォトグラフィック(写真的)である必要はあってもフォトリアルである必要はない、と語っていました。しかし今回は、実写が(CGの)キャラクターや要素と相互作用するシーンがたくさんあるため、私たちは自らのハードルを上げて100%フォトリアルな映像を提供しなければなりませんでした」。

キャメロンと彼の率いるクリエイティブ・チームが『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』のために作り上げた水中でのパフォーマンス・キャプチャー撮影のためのテクノロジーやテクニックは、疑いの余地なく、今後のハリウッド映画に波及することになるだろう。「あれはものすごく複雑な課題ですが、私たちはゼロからスタートしたわけではありません」とキャメロンは言う、「かつての『タイタニック』でも私たちは水のシミュレーションを行なっていましたからね。ただし(今回は)そこからレベルを1つ上げる程度のものではなく、5つほどレベルを上げなければなりませんでしたけれどね。なにより素晴らしいのは、この映画で水の問題を解決してしまえば、世界の終わりまでずっと、いつでもどんな水も描けようになるということです。これらのツールは、この業界全体に驚くほど重要な影響をもたらせるものになりました」。
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は全国の劇場で大ヒット上映中です。
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