パームスプリングス航空博物館では、12月5日のウォルト・ディズニーの誕生日にあわせて、“ザ・マウス”の愛称で親しまれたウォルト・ディズニーのグラマン社製ガルフストリームI型機の機内で実際に使われていたものの一部が一般公開されました。ウォルトがお気に入りの座席近くに設置され飛行状況を確認できるようカスタマイズされた計器パネルや、コックピットにいるパイロットと直接連絡が取れる電話機、飛行機の尾翼に座るミッキーマウスをイメージしたフライトバッグなど、同機の貴重な機内展示品です。これらの展示品は、ウォルト・ディズニー・アーカイブスから博物館へ長期貸与されたものです。
また同時に、ウォルト・ディズニー・アーカイブスのディレクター、レベッカ・クライは、パームスプリングス航空博物館がフェニックス・エアと共同で、ガルフストリームI型機の内部を1960年代にウォルトが乗っていた時のように修復・再現すると発表しましました。博物館副会長のフレッド・ベルは、「ウォルト・ディズニー・アーカイブスと連携し、この素晴らしい修復プロジェクトに携われることを大変うれしく思っています。パームスプリングス航空博物館は、26年の歴史の中で60機以上の航空機を復元してきました。ジョージア州カータースビルにあるフェニックス・エア・グループからは、私たちが必要とするあらゆる部品の寄贈を申し出ていただきました。フェニックス・エア・グループは世界的に航空サービスを提供しており、一時は当時飛んでいたガルフストリームIの世界の20%を所有・運営していたこともあります。私たちは、ウォルト・ディズニー、アーカイブス、そして世界中の何百万人ものディズニーファンに対して、この飛行機を今後何十年も楽しんでいただけるように、できるだけ正確に作業を行う責任を感じています。」と述べています。
修復と復元には約2年かかると予想されます。
9月にカリフォルニア州アナハイムで開催されたD23 Expo 2022に登場し話題となった同機は、その後カリフォルニア州パームスプリングスに旅立ち、パームスプリングス航空博物館のコレクションと一緒に展示されることになりました。今回の展示では、同機の歴史にスポットを当てながら、ウォルト・ディズニー・カンパニーにおける同機の歴史的意義や、パームスプリングス地域との関わりを紹介しています。
1963年、ウォルトはガルフストリームを手に入れました。機内はウォルトと妻のリリアンのアイデアでデザインされ、15人乗りで、ギャレーキッチン、2つのトイレ、2つのソファ、机、そしてミッキーマウスのシルエットをあしらったマッチブックや文具など、すべての始まりであるミッキーマウスへの想いがこめられました。1967年には機体番号が、N234MMとなりミッキーのイニシャルも入っています。ウォルト・ディズニー・カンパニーのために28年間活躍したこの飛行機は、推定8万3千人の乗客を乗せ、2万時間の飛行をしました。
パームスプリングス航空博物館では、この象徴的な飛行機が会社の歴史を通じて果たした役割について、次のようなことを知ることができます。
- 1963年、ウォルトと家族、そして会社の役員たちは、ガルフストリームのデモ機で、しばしば「プロジェクトX」と呼ばれる開発計画のために、セントラルフロリダを含む候補地を探りに出かけました。1964年初めに自分のガルフストリームを手に入れたウォルトは、フロリダへ何度も足を運び、最終的にウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートの魔法を実現するための基礎を築きました。
- ウォルトの飛行機はバーバンクとニューヨークの間を合計277,282マイルを往復し、1964年から1965年にかけて開催されたニューヨーク万国博覧会の準備をしました。このイベントは、「イッツ・ア・スモールワールド」などの象徴的なアトラクションを東海岸のゲスト、そして後にディズニーランドにもたらすことになりました。
- またウォルトは、プエルトリコのサンフアンにあるエルモロ要塞の上空を飛行しながら、今ではファンの間で人気の高いアトラクション「カリブの海賊」の外観のインスピレーションを得るために、このアトラクションの調査を行っていました。
- “ザ・マウス”は、ディズニーランドや名作映画「ジャングル・ブック」(1967年)などのプロモーションツアーでも使用されました。ディズニー・レジェンド、カート・ラッセルが主演を務めたウォルト・ディズニー・スタジオの映画『テニス靴を履いたコンピューター(The Computer Wore Tennis Shoes)』(1969年)や『そら。見えたぞ、見えないぞ!(Now You See Him, Now You Don't)』(1972年)にも登場しています。ディズニー・レジェンドであるジュリー・アンドリュースやアネット・ファニセロ、さらにはカーター元大統領やレーガン元大統領といった豪華なゲストたちも、同機にてパームスプリングスを訪れました。
- 1985年、青と白に塗装されたウォルトの飛行機は、親善ツアーや小児病院へのキャラクター訪問を行い、ディズニーの社会への貢献の歴史に新たな一ページを刻みました。